2025年12月10日
大学の修学支援新制度vs高校の就学支援金
今日は、ある大学法人の経理課長さんからのご質問です。この質問他校でもたまに聞かれます。
<Q>大学の修学支援新制度vs高校の就学支援金
大学の修学支援制度では、補助金と奨学費を両建て計上します。しかしながら高校の就学支援金については学校法人では、補助金や奨学費は計上しないで、学校法人では預かり金処理をします。どうしてですか?
<A>
大学等の「修学支援新制度」と高校の「就学支援金」の会計処理が異なる理由は、それぞれの法律において定められた支給の対象者(受給権者)と、学校法人が資金を受け取る際の法的地位が根本的に異なるためです。
※高校と大学の修学支援制度における法的性質と会計処理の比較
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比較項目 |
高校(高等学校等就学支援金) |
大学(高等教育の修学支援新制度) |
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本質 |
代理受領 |
減免額の補填 |
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根拠法律 |
高等学校等就学支援金の支給に関する法律 |
大学等における修学の支援に関する法律 |
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会計処理 |
預り金処理(補助金・奨学費は計上しない) |
両建て計上(「補助金収入」と「奨学費」を計上) |
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お金の受給権者 |
「生徒等」法第3条で生徒に対して支給すると規定されています。 |
「確認大学等の設置者(学校法人)」法第10条で国は設置者に対して交付金を交付すると規定されています。 |
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学校法人の役割 |
「代理受領者」生徒に代わって受け取り、授業料の支払いに充てます。 |
「減免の実施主体」大学が自らの義務として減免を行います。 |
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資金の法的性質 |
授業料債務の弁済生徒が払うべき授業料を、国からのお金で支払ったとみなします。 |
経費の補填(交付金)大学が負担した減免費用(奨学費)を国が補填するものです。 |
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資金の流れ |
国 → 都道府県 → 学校(預り) → 授業料債権と相殺 |
国等 → 大学(収入) → 減免費用の穴埋め |
<補足説明>
1.
高校の場合(代理受領)
高校の就学支援金について、学校法人が補助金収入として計上しないで「預り金」で処理をする最大の理由は、法律上この資金が学校に対する補助ではなく、生徒個人に対する支給と位置づけられているためです。
根拠となる高等学校等就学支援金の支給に関する法律の第3条では、就学支援金は高等学校等に在学する生徒等に対して支給するものであることが明記されており、もらう人(受給権者)が学校法人ではなく生徒本人であることを定めています。
さらに、同法第7条において資金の受け渡し方法が規定されています。ここでは、高校が受給権者に代わって就学支援金を受領し、その受給権者の授業料に充てることが定められています。この代理受領の規定により、学校法人はあくまで「生徒が国から受け取るべきお金」を代理人として預かり、それを生徒が学校に対して負っている授業料の支払いに充当するという法的な構成をとります。したがって、学校法人会計では、この資金は学校自体の収益ではなく、生徒からの預り金として処理し、授業料債権と相殺を行うことになります。
2. 大学の場合(費用補填)
大学等の修学支援制度において補助金と奨学費を両建て計上する理由は、法律上、大学側が主体となって減免を行う義務を負い、その費用を国が大学へ補填するという仕組みになっているためです。
大学等における修学の支援に関する法律』の4条1項では、確認大学等の設置者は、要件を満たす在学学生に対して「授業料等の減免を行うものとする」と規定されています。この条文により、まず大学法人が主体となって授業料を減額するという法的義務が生じ、これに伴い大学側には「授業料減免額」という経済的な負担(=奨学費等の支出)が発生します。
そして、その費用の補填について同法第8条では、この減免に要する費用は「国等が支弁する」と規定されています。また、私立大学の場合は同法第16条に基づき、日本私立学校振興・共済事業団を通じて減免資金の交付が行われます。
高校の制度とは異なり、ここでの国からの交付金は、学生個人への給付金を預かるものではなく、大学法人が自ら実施した減免措置という「大学の事業」に対する対価として、国から大学法人へ直接交付される資金という性質を持ちます。そのため、学校法人会計においては、大学が負担した減免額を「奨学費(支出)」として計上すると同時に、国からの補填額を「補助金収入(収入)」として計上する両建て処理が必要となります。
今日は、ここまでです。