2025年10月22日
私学法の会計規定
<Q>私学法の会計規定
私学法に定めのある会計規定について、本法、施行令、施行規則の別に教えて下さい。
<A>
私学法の会計規定は、計算書類等(貸借対照表、収支計算書など)及び財産目録の作成・保存(法第103条、第107条)、会計処理の基準(法第101条)を定め、監事・会計監査人による監査(法第104条)、公表義務(法第137条、第151条)等を規定しています(則第24条、第30条〜)。
<説明>
私学法の会計規定に関する詳細説明
私学法の会計規定は、学校法人のガバナンス強化とステークホルダーへの情報開示を主な目的として整備されています。下記に一覧を書いてみましたが、文量が多かったので利用については、原文をご確認ください。
1. 私立学校法(私学法)の規定
私学法では、学校法人の会計処理に関する基本的な枠組みと、作成・監査・公開の義務が定められています。
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項目 |
内容 |
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会計の基準 |
学校法人は、文部科学省令で定める基準に従い、会計処理を行わなければなりません(法第101条)。 |
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会計帳簿の作成・保存 |
・学校法人は、文部科学省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければなりません(法第102条第1項)。 ・会計帳簿及びその事業に関する重要な資料は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間保存しなければなりません(法第102条第2項)。 |
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計算書類等の作成・保存 |
・学校法人は、成立の日における貸借対照表を作成しなければなりません(法第103条第1項)。 ・毎会計年度終了後3月以内に、計算書類等(計算書類(貸借対照表及び収支計算書)、事業報告書及びこれらの附属明細書)を作成しなければなりません(法第103条第2項)。 ・計算書類等(計算書類及びその附属明細書)は、作成した時から10年間保存しなければなりません(法第103条第4項)。 |
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財産目録等の作成・備置き |
・毎会計年度終了後3月以内に、財産目録等(財産目録など)を作成しなければなりません(法第107条第1項)。 ・財産目録等は、当該会計年度に係る定時評議員会の翌日から5年間、主たる事務所に備え置かなければなりません(法第107条第3項)。 |
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計算書類等の監査と承認 |
・計算書類等は、監事の監査を受けなければなりません(法第104条第1項)。 ・会計監査人設置学校法人では、計算書類及びその附属明細書について、監事及び会計監査人の監査を受けなければなりません(法第104条第2項)。 ・監査を受けた計算書類等は、理事会の決議による承認を受けなければなりません(法第104条第3項)。 |
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情報公開 |
・学校法人は、計算書類等及び財産目録等のうち文部科学省令で定めるものの内容を公表するよう努めなければなりません(法第137条第2号)。 ・大臣所轄学校法人等(文部科学大臣が所轄庁の学校法人及び政令で定める事業規模等の法人)は、これらの書類を公表する義務があります(法第151条第2号)。 |
2. 私立学校法施行令の規定
私学法施行令では、主に私学法における大臣所轄学校法人等の基準を定めています。
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項目 |
内容 |
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大臣所轄学校法人等の基準 |
大臣所轄学校法人等(法第143条)となる事業の規模に関する基準は、最終会計年度の経常的な収益の額が10億円以上、または負債の部の合計額が20億円以上であること等とされています(令第3条第1項)。 |
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常勤の監事の選定の特例の適用に関する基準 |
常勤の監事を定めなければならない大臣所轄学校法人等(法第145条第1項)の事業の規模に関する基準は、最終会計年度の経常的な収益の額が100億円以上、または負債の部の合計額が200億円以上であることとされています(令第4条第1項)。 |
3. 私立学校法施行規則の規定
私立学校法施行規則(以下「則」)は、主に私立学校法(以下「法」)で定められた学校法人の計算書類等(計算書類及び事業報告書並びにこれらの附属明細書)および財産目録の作成・監査・公開に関する手続きを具体的に規定しています。
(1) 会計監査の実施と手続き
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項目 |
内容 |
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計算関係書類の監査 |
法第104条の規定に基づき、計算書類及びその附属明細書(計算関係書類)の監査に関する具体的な内容や手続きを定めています(則第30条)。監査には、公認会計士法第2条第1項に規定する監査のほか、計算関係書類に表示された情報と表示すべき情報の合致の程度を確かめ、結果を利害関係者に伝達するための手続きが含まれます(則第30条第2項)。 |
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会計監査人が監査する書類 |
会計監査人は、計算関係書類に加え、財産目録(貸借対照表に対応する項目に限る)を監査します(則第24条)。 |
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監査報告の内容 |
・会計監査報告には、監査意見(無限定適正意見など)や、事業報告書及びその附属明細書並びに財産目録(貸借対照表に対応する項目を除く)の内容と計算関係書類の内容等との間の重要な相違の有無、追記情報などを記載しなければなりません(則第34条第1項、第2項)。 ・会計監査人設置法人の監事による監査報告には、会計監査人の監査方法や結果を相当でないと認めた場合の理由や、会計監査人の職務遂行が適正に実施されることを確保するための体制に関する事項などを記載します(則第35条)。 |
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監査報告の通知期限 |
監事または会計監査人は、計算関係書類を受領した日から一定期間内(計算書類の全部:4週間、附属明細書:1週間)のいずれか遅い日までに、監査報告または会計監査報告の内容を理事および監事等に通知しなければならない、といった期限が定められています(則第32条、第36条、第38条)。 |
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事業報告書の記載事項 |
事業報告書及びその附属明細書には、法人の状況に関する重要な事項に加え、理事の職務の執行が法令及び寄附行為に適合することを確保するための体制(内部統制システム)の整備及び運用状況の概要を記載する決議があった場合、その概要を記載しなければなりません(則第29条第2項)。 |
(2) 財産目録等および情報公開に関する規定
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項目 |
内容 |
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財産目録の承認と準用 |
法第107条に基づき作成された財産目録は、理事会の決議による承認を受けなければなりません(則第43条第1項)。また、財産目録の承認手続きには、計算書類等の監査や評議員への提供に関する法および則の規定が準用されます(則第43条第2項)。 |
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大臣所轄学校法人等の情報公開の範囲 |
法第151条第2号に基づき、大臣所轄学校法人等(大臣所轄学校法人及び政令で定める事業規模等の法人)がインターネット等で公表しなければならない書類は、計算書類等、監査報告、会計監査報告、および財産目録等(役員等の住所に係る記載を除く)とされています(則第49条、第55条第2項)。 |
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子法人の定義 |
法第31条第4項第2号等に規定される「子法人」として、学校法人がその経営を支配している法人に関する基準を定めています。これには、学校法人が議決権の過半数を有する他の法人や、意思決定機関の構成員の総数に対する役員・職員等の割合が100分の50を超える他の法人などが含まれます(則第11条)。 |
4.【参考】私立学校振興助成法施行規則の会計規定
私立学校振興助成法の規定(法第14条第4項)により、補助金の交付を受ける学校法人は、事業活動収支内訳表、資金収支内訳表、人件費支出内訳表(人件費支出内訳表については監査報告が必要)を所轄庁に提出する必要があります(助成法施行規則第2条)。
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項目 |
内容 |
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所轄庁への提出書類 |
助成対象学校法人は、助成法第14条第4項の規定により、計算書類及びその附属明細書、翌会計年度の収支予算書に加え、以下の書類を所轄庁に提出しなければなりません(助成施則第2条)。 事業活動収支内訳表(助成施則2条1号) 資金収支内訳表(助成施則2条2号) 人件費支出内訳表(助成施則2条3号) 人件費支出内訳表が助成施則第5条の定めるところにより作成されているかどうかに関する公認会計士または監査法人の監査報告その他の所轄庁が定める書類(助成施則第2条第4号)。 |
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内訳表の作成基準 |
上記の各内訳表は、私学法に基づく学校法人会計基準に準拠して作成された計算書類の額を基礎とし、部門ごとに区分して記載しなければなりません(助成施則第3条第1項、第4条第1項、第5条第1項)。これらの記載方法等は、改正前の学校法人会計基準で規定されていた内容を引き継いでいます(施則第3条、第4条、第5条)。 事業活動収支内訳表(助成施則第3条) 資金収支内訳表(助成施則第4条) 人件費支出内訳表(助成施則第5条) |
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監査報告の作成 |
助成法第14条第3項の規定による監査報告の作成において、監査を行う公認会計士または監査法人は、その職務を適切に遂行するため、学校法人の理事、監事、職員等との意思疎通を図り、情報の収集及び監査の環境の整備に努めなければなりません(助成施則第1条第2項)。 |
今日は、ここまでです。
