2025年02月14日
【新基準】新しい注記事項
<Q>新しい注記事項
令和7年4月施行の学校法人会計基準では、注記事項が増えると聞きましたが、概要を教えて下さい。
<A>
新しい注記事項は、新基準「第五節 計算書類の注記 第40条」に定められています。
1.引当金の計上基準その他の計算書類の作成に関する重要な会計方針 2.重要な会計方針を変更したときは、その旨、その理由及びその変更による増減額 3.固定資産について減価償却累計額を直接控除した残額のみを記載した場合には、当該資産の減価償却額の累計額の合計額 4.金銭債権について徴収不能引当金を直接控除した残額のみを記載した場合には、徴収不能引当金の合計額 5.担保に供されている資産の種類及び額 6.翌会計年度以後の会計年度において基本金への組入れを行うこととなる金額 7.当該会計年度の末日において第13条第1項第4号に掲げる金額に相当する資金を有していない場合には、その旨及び当該資金を確保するための対策 8.セグメント(学校法人を構成する一定の単位をいう。)情報 9.重要な偶発債務 10.子法人に関する事項 11.学校法人の出資による会社に係る事項 12.関連当事者との取引の内容に関する事項 13.学校法人間の財務取引 14.重要な後発事象 15.前各号に掲げるもののほか、財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項 |
さて、新しい15の注記については、3グループに色分けしました。
◯黒字:従来からの注記事項と同じです。
◯青字:従来は、「財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項」の中に書かれていた注記が独立掲記されるようになりました。
◯赤字:新しい注記事項です。今後、公表される文科省の運用通知で内容の説明があるでしょう。少しだけですが説明します。
【8.セグメント(学校法人を構成する一定の単位をいう。)情報】
新基準からは従来の計算書類から内訳表を除き、この内訳表の代わりにセグメント情報を追加しました。現在、配分基準の検討が行われています。基本的に「経済実態をより適切に表す配分基準」が採用される見込みです。
あり方検討会の報告書によると
セグメント情報 |
内訳表 |
内訳表については、必ずしも部門別の教育研究コストの実態を表すものとはなっていないことから、改正私立学校法に基づく計算書類からは除き、部門別の情報として「セグメント情報」を表示する(P11)→ ・学校法人全体の経営状況に加えて、各学校等の個別の部門に関する情報開示の必要性も考慮する必要がある(P19)。 ・セグメント情報の開示に際しては、学校法人等のセグメントごとの経済の実態を反映したものとすることが望ましい。(P22) |
国または地方公共団体において、私立学校に対する経常費補助の効果を具体的に把握し、教育活動の実態に即した有効適切な振興策策定のための資料が得られるようにすること(P11) →補助金の配分の基礎としての要請から作成されているものであり、開示を前提とした基準にはなじまない(P9) |
ですが、報告書の説明は、どうもしっくりこない説明に感じます。このセグメント情報の開示については、私学の各団体の考えがぶつかり合っていました。
【10.子法人に関する事項】
4月施行の改正私学法では、監事や会計監査人に子法人の業務等の調査権限を付与するなど、子法人に対するガバナンスが強化される背景がありました。ここでの子法人は、議決権の割合等に着目して、経営支配の有無を判定することとしていいます(私学法施行規則11条)。
また、従来の「学校法人の出資による会社に係る事項」「関連当事者との取引」「学校法人間の財務取引」に関する注記と、今般の「子法人」の考え方が異なることから、現行の注記に「子法人」を追加しました。
今日は、ここまでです。