2025年02月07日
【財務分析】人件費の考え方(忘れがちな労働生産性)
<Q>【財務分析】人件費の考え方(忘れがちな労働生産性)
私達の高校の教員の人件費についての質問です。高校の教職員の人件費は、一人当たり人件費は、業界の平均ぐらいです。人数は、クラスにほぼ合った人数に思います。ですが、人件費比率が高めです。どこがおかしいのでしょうか?
※教員人件費
・学生生徒等納付金に占める人件費の割合(人件費依存率=人件費÷学生生徒等納付金)
・学生生徒等納付金と経常費等補助金の合計額に占める人件費の割合(補正人件費依存率=人件費÷(学生生徒等納付金+経常費等補助金))
<A>
人件費は、人数✕単価で、どちらも正常だとすると、残っている課題には、生産性が考えられます。生産性とは、投入された資源(インプット)に対して、どれだけの成果(アウトプット)が得られたかを示す指標です。財務分析では、企業の効率性や収益性を評価するために重要な指標となりますが、学校ではあまり見かけません。
生産性の基本算式は、産出額÷投入額でした。ここでは、簡単に考えて生産性を「学納金収入÷人件費」として考えます。考え方としては、同額の人件費支出額なら学納金収入が多い学校の方が、生産性が高いと言うわけです。生産性も種類があり労働についての生産性は、労働生産性といいます。労働生産性は、「一人の人がどれくらい役に立つ仕事をしているか、稼いでいるか」の指標です。労働生産性が高いと、少ない時間や努力でたくさんの成果を生み出すことができるので、学校でも会社でも効率的に仕事を進めることができる指標として評価されるのです。
生産性は、日常業務の言葉でいうと「収入獲得に結びついた教職員の活動の密度の濃さ」とも言えます。例えば、一人の教職員が定員満員の教室で授業をしている。一人の先生が、週に持っている授業の時間数が多い。一般論ですが、一人の教職員で多くの生徒を担当しているほど人件費の生産性が高いと言うことになります。
事務の職員さんでもICTを活用し、一人の職員で効率的な事務をしている場合は、分母の人件費が少なくなりますので生産性の数値は高くなります。
私学事業団の「今日の私学財政」でいうと、「専任教員1人当たりの生徒等数」「専任職員1人当たりの生徒等数」が近い指標です。それと学校ですので財務的な見方も大切ですが、教育の質を落とさない視点も大切です。
人件費は、経営的には総額では低く、個々人には高くが理想かも知れません。これを実現するのが、労働生産性です。労働生産性を高めるには、現場ががむしゃら働くだけではなく、「・収入改善策(分子)の改善」と「人件費の改善(分母)」の両面で考えていきます。例えば、
・収入改善策(分子)の改善例
・各クラスの定員確保(人数の確保) |
・少人数クラスは、教育充実費の確保(単価の確保)。 |
※教育の質低下には注意 |
・人件費の改善(分母)の改善例
・ICTを活用した授業・事務の活用 |
・教職員の改善活動 |
・教職員の適材適所 |
・スキルアップ研修 |
※長時間労働や過度なマルチタスク(兼務)に注意です |
生産性は、学校の業界ではあまり聞かない言葉ですが、企業では非常によく耳にする言葉です。
今日は、ここまでです。