「複式簿記の原則」についてグループ償却資産の現物管理

2024年11月18日

【減価償却の開始時点】おかしくない翌年度からの償却開始?!

減価償却

今日は、ある高校でのご質問です。たまに他校でも聞かれることがあります。

 







<Q>【減価償却の開始時点】おかしくない翌年度からの償却開始?!

 本校では、購入した固定資産の償却を翌年度から行っています。減価償却の開始時点がおかしいと思います。どうなっているのですか?

学校法人の減価償却に関する監査の取扱い(学校法人委員会報告第28号)

(3) 会計年度の中途で取得した固定資産に係る減価償却額の計算は、当該資産について計算される年間減価償却額を月数按分したものによるほか、次の簡便法を採用している場合も、重要性のない場合には、妥当な会計処理として取り扱うことができる。

イ.取得時の会計年度は、償却額年額の2分の1の額により行う。

ロ.取得時の会計年度は、償却を行わず、翌会計年度から行う。 

ハ.取得時の会計年度から償却額年額により行う。

 

<A>

 減価償却資産は、時の経過により価値を減少する資産なので(基準26条)、減価償却は、時の経過に合わせて行うのが会計の原則です。ただ、上記の委員会報告28(3)では、減価償却の開始時期について、別の方法を認めています。おそらく他の業界の方がみたらビックリするような方法に思います。

 この簡便法の前身は委員会報告8号(昭471=19721月)で、学校法人会計が施行された適用初年度でした。多くの学校法人では基準が施行される以前は、資金収支計算を中心とした計算体系がとられて、固定資産に対して減価償却を行うという会計慣行はありませんでした。このような時期に、「第8号」が公表されたということは、学校法人会計における減価償却を定着させる上で、当時としては大いに効果がありました。今のようにパソコンは全くなく、電卓も高級品でほとんどの学校にない時代でした。第8号の内容は、主として減価償却の計算手続等に対する簡便法といえるものでした。新たに減価償却制度を導入する学校法人にとって、簡便的方法を採用することによって、早期に、かつ、抵抗なく受け入れることができたことでしょう。現在でも、この簡便化された減価償却の計算手続を実務の中で見かけます。

 今回ご質問の減価償却の開始時期の簡便法について適用ポイントは、「重要性のない場合」です。簡便法は、あくまで便宜的にその採用が認められるのは、計算書類に与える影響が少ない場合だけです。ここでいう重要性とは、金額の重要性ということであって、科目別の重要性というか、固定資産の科目ごとに重要度を判定して、処理方法を選択するということではありません。ここでの金額の重要性とは、月数按分により算出した額と比較し、金額にさほど差がないことが条件となります。8号(昭47.1)が28号(昭56.1)に変更されるときに、大切なキーワードなので取扱いを明確にするために「重要性のない場合」という文言が加わり明記されました。

 例えば、平年度は、「ロ」の、翌年度から償却を開始する方法を採用している学校法人が、ある年度に校舎の大部分の建て替えをしたり、校舎を移転したようなときに、新規取得資産について平年度と同じ減価償却の取扱いをしていると、当該年度の減価償却額の負担は、原則的計算方法(新規取得資産の減価償却額を月数按分する方法など)によった場合に比し異常に少なくなり、真実の姿を表わさないことになります。このような会計年度には、平年度に新規取得資産に係る減価償却額を、「ロ」により翌年度から計算していても、当該年度に限り年間償却額を月数按分するなど、原則的な減価償却額の計算をする必要があります。

「イーハ」の計算方法を採用する場合には、資産の種類ごとに同一の方法を採用し、かつ、毎期継続して同一の方法を適用しなければなりません。

(一部参考:28号解説)

※まとめ:期中得資産の減価償却の償却額

ケース

内容

適用条件

原則

教育の用に供した時(月数按分)

 基準26条「ときの経過によりその価値減少」を認識する

簡便法

28(3)のイロハ

・イ…年額の1/2

・ロ…翌会計年度から

・ハ…取得会計年度から

金額の重要性がない場合

月数按分により算出した額と比較し、金額にさほど差がないことが条件

・科目別の重要性ではない

 

 今日は、ここまでです。



kaikei123 at 07:00│Comments(0)

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