2024年09月02日
【改正私学法】計算書類・会計帳簿の保存期間が法定１０年の理由は？
こんにちは！今日は、大学法人の監事さんからのご質問です。
＜Ｑ＞【改正私学法】計算書類・会計帳簿の保存期間が法定１０年の理由は？
改正私学法では、計算書類や会計帳簿の保存期間は10年と定められましたが（改正法102条、103条）、どうして10年なのですか？
＜Ａ＞
改正私学法の下では学校法人は、計算書類や会計帳簿等について、10年間その資料を保存しなければならないことと定められました。この保存の趣旨は、将来の紛争に備えて証拠として利用するためということで、評議員会や理事会の議事録と同様に役員の責任の時効等を考盧して規定したものと考えられます。※役員の責任については、民法第166条1項の消滅時効の10年が関係しているようです。
＜発展＞
１．法定の保存期間
まず、他法人の計算書類や会計帳簿の保存期間を確認します。ここでは、備え置きも保存と同義として簡便的にまとめています。
下記の表でみると、各法人の会計帳簿と計算書類の法定保存期間が10年と定められているのがわかります。また、議事録の保存期間（備置期間）も10年です。
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学校法人 |
社会福祉法人 |
一般財団法人 |
会社 |
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会計帳簿 |
10年 |
10年 (改正法45条の24第2項) |
10年 (一般法人法199条→120条) |
10年 (会社法432条2項) |
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計算書類 |
10年 |
10年 (改正法45条の27第4項) |
10年 (一般法人法199条→123条) |
10年 (会社法435条4項) |
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理事会議事録（備置） |
10年 (改正法43条5項) |
10年 (社福法45条の15第1項) |
10年 (一般法人法197条→97条1項) |
10年 ※取締役会 (会社法371条1項) |
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評議員会議事録（備置） |
10年 (改正法78条2項) |
10年 (社福法45条の11第2項) |
10年 (一般法人法193条2項) |
10年 ※株主総会 (会社法318条2項) |
２．１０年の根拠
私立学校法の関連図書に保存期間10年の説明が見当たらないので、他法人の図書をあたってみます。
（１）
社会福祉法人
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社福法45条の24第2項の解説
社会福祉法人は、会計帳簿等について、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その資料を保存しなければならないとされるが、これは、評議員会や理事会の議事録と同様、役員の責任の時効等を考慮して規定したものである。
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社福法第45条の27第4項の解説
一般法人法第197条において準用する同法第123条第4項と同様の規定であり、計算書類及び附属明細書は後日紛争が生じた場合の重要な資料となりうるため、その作成後10年間は保存しなければならない。
（参考：新版社会福祉法の解説p314、319−2022編集：社会福祉法令研究会、発行所：中央法規出版株式会社）
（２）
会社法
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会計帳簿などの保存の趣旨（会社法432条の解説）
会計帳簿などの保存の趣旨は、将来の紛争に備えて証拠として利用するためということで異論がない。（参考：論点体系 会社法 3 株式会社��（役員等・計算）p489−2012第一法規）
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取締役会議事録の備置期間
取締役会の日から10年間、法務省令の定めるところにより作成され、出席した取締役および監査役が署名等した議事録を、 その本店に備え置かなければならない。10年の期間は、株主総会の議事録に併せて、また、役員等の責任の時効等に配慮して、定められた｡（参考：会社法コンメンタ-ル (8)p322（2009商事法務）
役員の責任は民法第166条1項の消滅時効の10年が関係しているようですが、正確な法解釈が難しそうなので、今日は、ここまでです。
