2023年01月16日
【教管区分】中学校・高校のクラブの経費の教管区分
<Q>中学校・高校のクラブの経費の教管区分
私学事業団の本をみると(※)クラブ室の備品や経費は、教育研究用機器備品や教育研究経費にするとありました。学生が対象なので大学と思われます。
さて、中学校、高校ではクラブ活動の備品や経費の教育・管理の区分は、教育で良いのでしょうか?
(※)私学事業団の経営に関する実務問答集 112
学生会館、クラブ室の備品およびそれに係る修繕費
A 学生会館およびクラブ室は、学生の課外活動に係る施設であるから、そこに備える備品は教育研究目的である。したがって備品の価額が学校法人の固定資産計上基準を上回る場合は「(大科目)設備関係支出」「(小科目)教育研究用機器備品支出」に計上し、資産計上基準を下回る場合は「(大科目)教育研究経費(支出)」「(小科目)消耗品費」に計上することとなる。 なお、これらの備品の修繕に係る費用は「教育研究経費(支出)」に計上する。 |
<A>
中学校や高校の部活動の教育性を説明するのがややこしいのは、部活動が教科や教科外活動の代表である特別活動に明記されていないからでしょう。
そこで、今日は、教育課程の国家基準である学習指導要領をみてみましょう。
まず、中学校の学習指導要領です。勝手に部分引用します。
■中学校学習指導要領 第5 学校運営上の留意事項 1 教育課程の改善と学校評価、教育課程外の活動との連携等 ‥‥ ウ 教育課程外の学校教育活動と教育課程の関連が図られるように留意するものとする。特に、生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化、科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵かん養等、学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際、学校や地域の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行い、持続可能な運営体制が整えられるようにするものとする。 |
次は、高校の学習指導要領です。
第6款 学校運営上の留意事項 1 教育課程の改善と学校評価、教育課程外の活動との連携等 ‥‥‥ ウ 教育課程外の学校教育活動と教育課程の関連が図られるように留意するものとする。特に、生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化、科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵かん養等、学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際、学校や地域の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行い、持続可能な運営体制が整えられるようにするものとする。 |
細かな教育課程(教科・教科外活動)の説明をすると難しくなるので、今日は最新の学習指導要領を引用しました。部活動は、教育課程外の教育活動の一環なのですね。部活は課外活動の位置づけなので教員免許を持つ教員が指導に当たる必要はないのですが日本では教員が担当することが多く、教員の過重労働の一因と言われることもありました。このため、学校教育法施行規則改正で部活動指導員が、学校の正規の職員として位置づけられました(第78条の2)。
まとめです。学習指導要領では中学校・高校の部活動が教育課程外の学校教育活動と明記しているので、クラブ室の備品は、教育研究用機器備品。経費は、教育研究経費と会計処理して問題ないでしょう。
<補足:クラブ活動が教育か管理か迷う理由??>
学校の教育課程は、各教科と教育課程外に分かれていていました。小学校で言うとこんなな感じです。
※小学校の教育課程イメージ
教育課程 |
各教科(国語・算数‥‥) |
|
教科外 |
道徳 |
|
外国語活動 |
||
総合的な学習の時間 |
||
特別活動 |
ここで、部活動は特別活動に入るのですが、学校種ごとに特別活動の内容が微妙に異なります。特に部活動の部分です。小学校では、部活動は特別活動に入りますが、中学校・高校では部活動は特別活動に含まれません。下記の図のとおりです。
※特別活動の領域
学習指導要領(小:第6章、中・高:第5章第2)
小学校 (学教法規則50条) |
中学校 (学教法規則72条) |
高等学校 (学教法規則83条) |
学級活動 |
学級活動 |
ホームルーム活動 |
児童会活動 |
生徒会活動 |
生徒会活動 |
クラブ活動 |
− |
− |
学校行事 |
学校行事 |
学校行事 |
*「クラブ活動」は、昭和43年の学習指導要領の改訂で導入されたが、平成10・11年公示版の改訂で中高校の必修クラブは廃止となり、小学校だけが残っています。(一部参考:「これだけ覚える 教員採用試験教職教養 ’21年版」p63 2019)
さて、中学・高校の場合は、クラブ活動が特別活動から外れてしまいました。この説明です。
‥‥1998 (平成10)年の教育課程審議会答申は中学校「特別活動」にかかわって、「『クラブ活動』は、放課後等の部活動や学校外活動との関連、今回(←当時のこと)創設される『総合的な学習の時間』において生徒の興味・関心を生かした主体的な学習活動が行われることなどを考慮し、部活動が一層適切に行われるよう配慮しつつ、廃止する」と述べ、高校クラブ活動も「中学校と同様の趣旨で廃止する」としました。答申に基づいて1998年改訂の学習指導要領は、小学校の「クラブ活動」に関して「学校において適切な授業時数を充てるように」としましたが、中・高校「クラブ活動」には一切言及がなく、“クラブ活動廃止”の一部報道がなされたりしました。しかし、ここでいう廃止とは必修の「クラブ活動」のことで、部活動は残ったのでした。問題の発端は1968・1969・1970年の小、中・高校の学習指導要領改訂にさかのぼります。改訂で小学4年以上に週1時間程度の必修「クラブ活動」が教師主導の"授業”として設けられ、“教育課程内クラブ”の位置を附与されました。他方、放課後などに児童・生徒の自由な自治的集団活動として展開されてきた従来からのクラブ活動は、"教育課程外"の"特別クラブ"(小学校)ないし"部活動” (中・高校) とされました。‥‥(参考:「改訂版 教職用語辞典」p166- 2019)
今日は、ここまでです。