2020年05月26日
【退職金関係】交付金と退職金とを相殺する?しない?とその理由!
<Q>【退職金関係】交付金と退職金とを相殺する?しない?とその理由!
事業活動収支計算書の話です。
大学では、私立大学退職金財団から受け取る私立大学退職金財団交付金収入は退職金とは、相殺しません。
ですが、幼稚園や高校では、都道府県の私学退職金団体からもらう交付金と退職金を相殺できます。
そうして、大学では交付金と退職金を相殺できないのですか。
<A>
まず、会計処理を確認します。「退職給与引当金の計上等に係る会計方針の統一について(通知)」に関する実務指針(学校法人委員会実務指針第44号)からです。
大学の場合は、修正負荷方式を採用しています。
1−1−3 私大退職金財団からの交付金等の会計処理及び表示 学校法人が私大退職金財団から受け取る交付金は、「(大科目)雑収入」のうちに適当な小科目(例えば、「私立大学退職金財団交付金収入」等)を設けて処理する。なお、事業活動収支計算書上、退職金と交付金とは相殺せずに両建表示する。 |
高校や幼稚園の場合は、いわゆる積立方式を採用している私学退職金団体に加入している場合です。
1−1−4私学退職金団体からの交付金等の会計処理及び表示 職員の退職時に学校法人が私学退職金団体から受け取る交付金は、「(大科目)雑収入」のうちに適当な小科目(例えば、「私学退職金社団交付金収入」等)を設けて処理する。なお、いわゆる積立方式を採用している私学退職金団体に加入している場合には、事業活動収支計算書において、当該教職員に係る退職金と交付金の額とを相殺して表示することができる。 |
このように、私立大学退職金財団と高校や幼稚園が加入する退職金団体の財政方式が違うため会計処理も異なってきます。
基礎知識の復習をしておきます。研究報告22号Q1を抜粋してみると、
【高校・幼稚園が加入する私学退職金団体】 事前積立方式は、登録された全教職員について将来必要とされる交付金を賄うに足る掛金を予測し交付金に要する資金を事前に積み立てていく方式。 【大学が加入する私立大学退職金財団】 賦課方式は年度ごとに実際に退職する教職員に対して必要とされる交付金の額に見合うだけの資金を加入学校法人に配分し徴収する方式。私大退職金財団が採用している修正賦課方式は、賦課方式に一定の積立金を保有して運営する財政方式であり、財政運営上の安全性を確保するため、退職資金交付額の1年分に相当する額を積み立てることとし、更に若干の安全率を加味した方式である。 |
さて、やっとご質問のご回答です。なぜ、大学では、事業活動収支計算書で交付金と退職金を相殺できないかです。これは、この会計処理を決めた時の記録を見るのが一番です。旧「私立大学退職金財団に対する負担金等に関する会計処理及び監査上の取扱いについて(S58.3.29 学校法人委員会報告第29号)からです。
2.会計処理及び表示 (1)負担金について ‥‥‥‥‥ (2)交付金について 学校法人が財団から受ける交付金については、これと退職金とを相殺して表示すべきであるという考え方もあるが、公開草案で示されているような理由から、この考え方を否定している。つまり、退職給与引当金を計上している学校法人においては、教職員の退職時に退職金についての消費支出の負担は原則として生じないわけであり、したがって消費収入たる交付金と相殺すべき相手がないことになる。むしろ相殺すべき相手は資金収支の上での掛金ということになろうが、掛金との相殺が適当ではないことは言うまでもない。したがって、このようなことから相殺は行わないこととされたのである。 |
今日は、ここまでです。