2015年12月18日
【監査】リスク評価手続って何だ??
こんにちは! 今日は、会計士さんからのご質問です。今日の回答は、会計士さん向きのご回答なので、学校法人の方にとっては、聞き慣れない言葉がドンドン出てきますが、すべて学校会計の法規集に掲載されている範囲内でのご回答です。
<Q>学校法人監査のリスク評価手続とは??
学校法人で監査する場合のリスク評価手続について教えて下さい。
<A>
リスク評価手続を常識的に考えると、まるで時限爆弾を探すような調査手続の感じがしますが、会計監査の世界では当たり前の日常使う専門用語になっています。
1.リスク評価手続とは
監査人は、重要な虚偽表示のリスクを十分に評価するために計画したリスク評価手続、その実施の時期及び範囲を監査計画に記載します。通常、リスク評価手続の計画は監査の初期の段階で作成さます。
リスク評価手続においては、固有リスクと統制リスクを結合し、重要な虚偽表示のリスクとして評価します。
もう少し詳しく言うと、リスク評価手続とは、監査人が、内部統制を含む、学校法人及びその環境を理解し、重要な虚偽表示のリスクを暫定的に評価するために実施する監査手続です。
リスク評価手続とは、監査人が、内部統制を含む、学校法人とその環境を理解し、不正か誤謬かを問わないで、計算書類全体レベルの重要な虚偽表示リスクと、アサーション・レベルの重要な虚偽表示リスクを識別し評価するために実施する監査手続です。
さて、具体的なリスク評価手続としては、
(1)理事者、監事、その他学校法人の教職員及び外部者への質問
(2)分析的手続
(3)観察及び記録や文書の閲覧
(4)ウォークスルー 等があります。
2.学校法人監査での留意点
監査人が、学校法人において、質問や分析的手続等のリスク評価手続を実施するに当たり留意すべき事項は、以下のとおりです。
リスク評価手続 | 主な留意点 |
(1)理事者、監事、その他の学校法人の教員。職員及び外部者への質問(聴く=audit) | ・学校法人の理事者、監事、経理責任者及び内部幣杏相当者に対する質問によって、多くの情報を入手することができるのは企業と同様です。 ・他の監査手続として、例えば、顧問弁護士や鑑定専門家などに対して質問を実施したり、学校法人の関連当事者や関係する団体等(後援会、PTA、関係する財団法人や宗教法人、教員.職員など)から情報を得ることも有効な場合があります。 |
(2)分析的手続
| ・分析的手続を実施するに当たっては、予算や事業活動収支計算書項目等を考慮し、学校法人の収入支出等の特徴に留意することが必要です。 ・分析的手続は、計算書類上及び監査上留意すべき通例でない取引又は会計事象、金額、比率及び傾向の存在を識別するのに有効です。 ・この場合、計算書類項目の比率分析や趨勢分析だけではなく、例えば、収容定員充足率や教員1人当たり学生生徒数のような、計算書類に関連する金額以外のデータを利用することも有効です。 |
(3)観察及び記録や文書の閲覧(視る)
| ・内部統制を含む、学校法人とその環境を理解するために、例えば、出納業務の観察は有効であり、建設中の校舎や高額の機器備品を有する研究施設の視察は、施設設備の管理状況を把握する上で役立つ。 ・文書の閲覧において、予算書は、自主的・自律的な運営が要請される学校法人において、その諸活動を強力にコントロールする計画であり、理事会議事録や事業計画と並び学校法人の経営計画を把握する上で重要な書類です。 ・また、学校法人の重要な収入である補助金については、計上科目や計上額の正確性に関するリスク評価を行う上で、補助金交付要綱、内示通知書、交付申請書、交付 決定通知書、交付請求書、支払通知書、交付確定通知書、実績報告書等の補助金交付に必要な一連の書類を閲覧することが必要です。 |
(4)ウォークスルー
| ・理事者に対する質問の回答を裏付けるとともに、内部統制を含む、学校法人とその環境について理解するには、観察や閲覧の他、取引の開始から計算書類までの追跡(ウォークスルー)の実施が有効です。 ・例えば、学校法人の主要な収入科目である学生生徒等納付金収入について、学費管理システムを経由した取引のウォークスルーを実施することにより、取引の流れや内部統制の業務への適用状況を把握します。 ・なお、ウォークスルーは、監査人が、過年度の監査において入手した情報を、当年度の監査に利用する場合に、過年度の監査において入手した内部統制等に関する監査証拠について、これらの情報に影響を与える変化が生じていないかどうかを確かめるための監査手続の一つです。 |
参考:監査基準委員会報告書315「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」を学校法人監査に適用する場合の留意点に関するQ&A(H24。学校法人委員会研究報告第23号)
今日は、ここまでです。