2013年03月12日
【ズバリ!】基本金組入額を帰属収入から引く理由
こんにちは! いろいろなところでよく聞くご質問です。当初予算の理事会で経理のご専門でない校長理事の方からのご質問です。
<Q>基本金組入額を帰属収入から引く理由
学校の決算書では、「基本金組入額をどうして帰属収入から引くのですか?」
帰属収入 100 基本金組入額 △20??? |
<A>
今日は、くだけた話し言葉でご説明します。
【経理のご経験のない方のためのご説明】
私立学校は、「人格の完成を目指し」て(教育基本法第1条)設立され、公的な補助金が分配されます。そのため、学校には強い永続性が求められます。つまり、学校は簡単につぶれてしまっては困るのです。
そこで、学校の設立に当たっては、所轄庁は設置基準と言う形で校地・校舎・備品などを、学校を始める前に自分のお金(自己資金)で用意するように指導します。学校法人の会計は、この考え方を受けて、学校法人が自由に使える帰属収入(自己資金)から、校地・校舎などの財源に当たる基本金組入額をまず一番目に引くのです。ズバリ、「帰属収入(自己資金)から基本金組入額を先に差し引くのは基本金が設置基準のようなものだから先に引くのです。」 基本金は、借金に頼らない学校経営を実現する力持ちです。
でも、学校が帰属収入から勝手に基本金を引いて収支差額を操作しないように、基本金の組入額は理事会の決議で決めることになっています。通常は、この理事会決議は、決算理事会で自動的に承認されることが多いです。
もう一度、復習です。「帰属収入(自己資金)から基本金組入額を先に差し引くのは基本金が設置基準のようなものだから先に引きます。」これが、今まで基本金と接して、一番、わかりやすかった説明です。この説明は、経理出身の大学の学園長さんから教えていただきました。
(まとめ)
基本金の理解の仕方
学校には強い永続性が求められる
↓
設置基準が作られた
↓
設置基準のように、会計でも設備代等を先に引こう
||
基本金の誕生
↓
学校の財務は基本金のおかげもあり健全校が多い
経理のご経験のある方は、言葉尻が似ているので「基本金」と「資本金」を比べます。ところが、このパターンが一番、基本金の理解を困難にします。基本金は背景が私立学校法、資本金は背景が会社法で、背景が違うので比較するのは、基本金の理解を困難にしてしまいます。基本金を理解するなら資本金との比較でなく、まず私立学校法の理解が先です。敢えて言えば、学校会計は、学校の永続性を実現するために、企業会計の一般理論では説明できない基本金取引を創設しました。
そもそも学校会計では、「資本取引と損益取引区別の原則」がありませんが(基準2条)、基本金組入額は、資本取引でも損益取引でもありません。基本金の取引は、理事会が決めた取引です。理事会が基本金の組入を認めれば基本金取引ありだし、理事会が基本金の組入を認めなければ基本金の取引は無しになります。その意味で基本金の取引は、実際の設備購入取引を背景としながらも最終的には理事会が取引の有無を決める「みなし取引」の部分があります。
基本金は、企業会計の常識では、理解しづらいものなのですが、私立学校の永続的な発展のために実益があまりにも大きい勘定なので、今回すすんでいる基準改正にあたっても残ることになっています。
また、現行の学校法人会計基準を作られた専門委員の方の説明では、基本金を「元入高」と説明しておりました。この「元入高」は、基本金の説明で2番目に分かりやすかった説明です。経理の経験者の方にとってはスッキリ、しっくりいきそうな説明です。
※出典:「学校法人会計基準(案)」逐条解説。S44高橋吉之助・村山徳五郎。産業経理
「学校法人の場合、将来にわたる事業運営のために持続的に維持すべき資金、つまりその意味で元入高として認識されるべき資金」
今日は、短く説明の予定でしたたが、少し長くなってしまいました。失礼いたしました。
今日は、ここまでです。