2007年08月06日
【21条】翌年度消費収入超過額等の書き方
こんにちは! 消費収支計算書の6回目です。基準第21条(翌年度消費収入超過額等)です。消費収支計算書は、各条にこだわらないで、15条から通して読まないとわかりませんね。さて、21条です。
第21条(翌年度繰越消費収入超過額等)
当該会計年度において次に掲げる額がある場合には、当法額を相互に加減した額を、翌年度繰越消費収入超過額又は翌年度繰越消費支出超過額として、翌会計年度に繰り越すものとする。
― 当年度消費収入超過額又は当年度消費支出超過額
二 前年度繰越消費収入超過額又は前年度繰越消費支出超過額
三 消費支出準備金(特定の会計年度の消費支出に充当するために留保する準備金をいう。以下同じ。)として当該会計年度において留保した額
四 消費支出準備金の当該会計年度における取崩額
五 第31条の規定により当該会計年度において取り崩した基本金の額
2 前項第3号の消費支出準備金の留保は、翌年度繰越消費支出超過額を繰り越すこととなる場合には、行なうことができないものとする。
【解説】
1.本条の趣旨
本条は、翌年度繰越消費収入超過額または翌年度繰越消費支出超過額の計算方法を定めるとともに、消費支出準備金の留保の制限を定めたものです。
2.消費支出準備金について
消費支出準備金は、将来における消費収支の計画的な均衡を図るため、特定の会計年度の消費支出に充当する目的をもって留保する準備金です。将来において、たとえば開校100周年記念式典を行なうための準備金です。
本条第2項は、消費支出準備金の留保を行なうことができない場合を明らかにいます。 消費支出準備金の留保をしても翌年度繰越消費支出超過額が出ないときに 限り、その範囲内でのみ消費支出準備金の留保ができます。これは、当該会計 年度における消費収支の均衡が取れない状態で、将来のために留保することは、消費支出準備金の制度を設けた趣旨に反するからです。
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この記事へのコメント

学校法人の経理に携わるようになり結構な年数になりますが、未だに理解できないでいることがあります。それは「消費収支上の累積赤字(翌年度繰越消費支出超過額)は悪なのか」ということです。本学は、資金収支上では全く問題がなく財務状況は安定しているのですが、消費収支上では翌年度繰越消費支出超過額が結構な額になっております。直接の原因は過去からのものであるため、長年、赤字を改善すべく努力しているところです。
しかし、赤字が多額であることのデメリット(罰則等)が明確に説明できず、予算作成の際など、学園内にて十分な理解をしてもらえず困ってしまいます。「赤字があっても良いではないか」と言う役員もいるくらいです。本当に赤字を改善させる必要はないのでしょうか。
<コメント>
学校会計の消費収支差額は、経営の採算を取れているかみます(基準15条)。
1.2つの消費収支差額
単年度の消費収支は、消費収支計算書の「当年度消費収支差額」、開校以来の累積額は「翌年度繰越消費支出超過額」でみます。そして、翌年度繰越消費支出超過額は貸借対照表にも表示されます。
2.学校経営の採算とは
学校経営をビジネス的にみると「設備投資型のサービス業」と見られます。
学校経営では、学校法人を作るときに学校を永続的な経営を求めるために、まず帰属収入から校地・校舎などの固定資産の確保と求めます(基本金繰入額)。残りのお金が教育研究活動に使って良いですよいうことで消費収入と言います。実際、人件費や経費を払って消費収支差額は均等にして下さい。と基準15条は言っています。
つまり、消費収支差額が0と言うことは、設備投資部門○、教育サービス部門○と言うことです。
3.消費収支差額マイナスの意味とデメリット
そうすると、消費収支差額がマイナスと言うときは、必要以上に設備投資としたり(基本金組入額の過大)、教育研究事業が赤字と言うことになります。
消費収支差額がマイナスでも、私立学校法では罰則はありません。
実務上のデメリットとしては、設備投資面では減価償却引当預金が不足しているので、次回の設備更新は借金になる。もっと、収支が悪いと人件費・経費の支払いができないことになります。
3.推薦書
実は、「すぐわかる 学校法人会計の仕組みと決算書の見方」(出版社「ぎょうせい」。定価3500円。平成24年3月発刊)の第2章に決算書の見方を公認会計士協会に怒られてしまうくらい簡単に書きました。
学校会計の広場 事務局 梶間栄一