2024年05月
2024年05月29日
理事長が行う債務保証の注記
こんにちは！今日は、ある大学法人の監事さんからのご質問です。
＜Ｑ＞理事長が行う債務保証の注記
当法人では、銀行借入について理事長が個人保証をしています。これは、貸借対照表の注記にならないんでしょうか？
＜Ａ＞
理屈で言えば、貸借対照表末尾の関連当事者の注記に記載することが望ましいのですが、実務では注記をしない学校法人が多いように感じます。
＜少し解説＞
学校法人が銀行から借り入れをする場合、理事長が個人保証する場合がみられます。この場合に貸借対照表に注記が必要かどうかです。考えられるのは、関連当事者の注記です。理事長の債務保証について、関連当事者の注記が必要かどうかは議論が分かれています。
１． 関連当事者の注記を必要とする考え方
関連当事者の注記は、「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について（通知）（平17.5.13 17高私参第1号）」で求められています。ここでは、その取引が「無償の場合又は有償であっても時価に比して著しく低い金額等による場合には、原則として第三者間において通常の取引として行われる場合の金額等によって重要性を判断し、注記すること」としています。つまり、金額等に重要性があれば、理事長の債務保証を注記することになります。通常は、借入金は、金額等に重要性があると考えられます。注記した方が、学校法人と役員との取引の全体を開示することで情報の透明性を高める等の趣旨からも注記が望ましいと考えるのです。
２． 注記不要とする考え方
他方で、前記の通知では、下記の場合は注記を要しないとしています。
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�＾貳牟チ萋�札による取引並びに預金利息及び配当金の受取りその他取引の性格からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引 |
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��
役員に対する報酬、賞与及び退職慰労金の支払い |
|
��
その学校法人に対する寄附金 |
ここで��で学校法人に対する寄付金が注記を要しない取引とされていることから、借入金に対する被保証も学校法人にとっては不利にならないので、また、自己又は第三者のために行う取引ではないため、注記しなくともよいという考え方もあります。
＜関連＞
学校法人会計基準改正に伴う相談回答事例（学校法人委員会研究資料第1号）
Q10 借入金に対する理事長の債務保証の注記の要否
今日は、ここまでえす。
2024年05月27日
基本財産と運用財産について
こんにちは！今日は、ある高校法人の監事さんからのご質問です。
＜Ｑ＞基本財産と運用財産について
財産目録には、基本財産や運用財産が出てきますが、基本財産や運用財産はどこで紹介されている言葉ですか？学校法人会計基準には、出てきませんが。
＜Ａ＞
基本財産や運用財産は、寄附行為に出てきますし、毎年、学校法人が作成する財産目録にも出てきますので馴染が深い用語に思います。今日は、そのもともとの出典を説明します。
基本財産や運用財産は私立学校法よりの言葉です。どういうことかと言うと、現行私学法25条には下記の定めがあります。
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現行私立学校法 （資産） 第25条 学校法人は、その設置する私立学校に必要な施設及び設備又はこれらに要する資金並びにその設置する私立学校の経営に必要な財産を有しなければならない。 ２ 前項に規定する私立学校に必要な施設及び設備についての基準は、別に法律で定めるところによる。 |
そして、この２つの財産について、私立学校法施行規則第2条4項においては赤字を基本財産、青字を運用財産と読んでいます。
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現行私立学校法施行規則 （寄附行為認可申請手続） 第2条 ‥‥‥ ６ 第2項第1号の財産目録は、基本財産（学校法人の設置する私立学校に必要な施設及び設備又はこれらに要する資金をいう。）と運用財産（学校法人の設置する私立学校の経営に必要な財産をいう。）とを区分して記載するものとする。ただし、学校法人が収益を目的とする事業を行う場合には、収益事業用財産（収益を目的とする事業に必要な財産をいう。）を、さらに区分して記載するものとする。 |
つまり、
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私学法25条 |
私学法施行規則2条6項 |
|
学校法人の設置する私立学校に必要な施設及び設備又はこれらに要する資金 |
基本財産 |
|
学校法人の設置する私立学校の経営に必要な財産 |
運用財産 |
と言う関係にあります。
今日は、ここまでです。
2024年05月20日
【決算】授業料等減免費交付金の精算処理
こんにちは！今日は、ある短期大学でのご質問です。
＜Ｑ＞【決算】授業料等減免費交付金の精算処理
修学支援新制度の給付型奨学金の会計処理の確認です。令和５年度では最終の変更交付決定により補助金を返金することになりました。会計処理は、どうなりますか？
＜Ａ＞
交付された５年度の最終の変更交付決定により発生した補助金の返還については、返金すべき金額を補助金収入から減額し、同額を未払金として計上することになります。
今日は、ここまでです。
2024年05月17日
【決算】償却済減価償却資産の備忘価額は必須？
こんにちは！今日は、ある大学でのご質問です。
＜Ｑ＞【決算】償却済減価償却資産の備忘価額は必須？
当法人では、固定資産の減価償却は残存価額を０にして償却しますが、償却済になっても備忘価額１円を必ず残しています。備忘価額を残すのは、決まっていることなのでしょうか？
＜Ａ＞
減価償却資産の備忘価額については、会計法規集を見ると定めがあります。学校法人の減価償却に関する監杳上の取扱い（学校法人委員会報告第28号)では、
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(2)
有形固定資産の減価償却額の計算に当たっては、残存価額を零として行った場合であっても、妥当な会計処理として取り扱うものとする。この場合、最終年度に備忘価額を付するものとする。 |
とあります。つまり、備忘価額を残すのは個別償却資産の場合は必須です。
ただし、機器備品のグループ償却の場合は、こちらは減価償却のウルトラ簡便法なので割り切って備忘価額は残しません。
※図表 減価償却資産と備忘価額
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償却方法 |
備忘価額 |
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個別償却 |
必須 |
|
グループ償却 |
不要 |
今日は、ここまでです。
2024年05月15日
【決算】基本金明細表でも第4号基本金の表示
こんにちは！今日は、ある短期大学でのご質問です。
＜Ｑ＞【決算】基本金明細表でも第4号基本金の表示
今年度は、第4号基本金について組入れも取り崩しもありませんでした。基本金明細表の表示は下記の通りで良いですか？
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基本金明細表 |
|||
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事項 |
要組入高 |
組入高 |
未組入高 |
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第４号基本金 |
|
|
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前期繰越高 |
１００ |
１００ |
０ |
|
当期組入高 |
０ |
０ |
０ |
|
当期取崩高 |
０ |
０ |
０ |
|
当期末残高 |
１００ |
１００ |
０ |
＜Ａ＞
基本金明細表の様式は、基準第十号様式にあります。ここでは、注意書きとして「（注）１
この表に掲げる事項に計上すべき金額がない場合には、当該事項を省略する様式によるものとする。」とあります。そうすると、当期組入高と当期取崩高は、計上すべき金額がないので、その事項（当期組入高と当期取崩高）を省略する様式になります。
回答例です。
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基本金明細表 |
|||
|
事項 |
要組入高 |
組入高 |
未組入高 |
|
第４号基本金 |
|
|
|
|
前期繰越高 |
１００ |
１００ |
０ |
|
当期末残高 |
１００ |
１００ |
０ |
本当がどうか心配な方は、文科省の通知に添付されている基本金明細表を見てみると良いでしょう。「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について（通知）
17高私参第1号平成17年5月13日」の別添で基本金明細表の記載例をみてみます。ここでは、基本金の当期組入高がなかったので基本金明細表では、カットされています。
（別添１）基本金明細表の記載例（抜粋）
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事 項 |
要組入高 |
組入高 |
未組入高 |
|
第４号基本金 |
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前期繰越高 |
300,000,000 |
300,000,000 |
0 |
|
当期組入高 |
9,000,000 |
9,000,000 |
0 |
|
当期末残高 |
309,000,000 |
309,000,000 |
0 |
細かいことですが、基準の第十号様式の（注）は遵守したいものです。
今日は、ここまでです。
2024年05月13日
人件費支出内訳表でも役員退職慰労金の表示
こんにちは！今日は、ある高校でのご質問です。
＜Ｑ＞人件費支出内訳表でも役員退職慰労金の表示
今回始めてや役員に退職慰労金を支給しました。ですが、人件費支出内訳表のどこに表示したらよいかわかりません。役員報酬支出に含めるべきか？それとも、退職金支出の（何）にするか？どちらでしょうか？
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人件費支出内訳表 役員報酬支出 ←ここ？？ 退職金支出 教員 職員 （何） ←ここ？ |
＜Ａ＞
役員に対する退職金は、一般の教職員に対する退職金とほぼ同様のものとして一般に認識されており、その性格から、人件費支出内訳表の「退職金支出」のうちの「職員」の次に「役員」の細分科目を設けて記載することが妥当と考えられています。つまり「退職金支出の（何）」の（何）に役員がくるわけです。
※「人件費関係等について（学校法人委員会研究報告第26号）Ｑ１０が同趣旨。
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人件費支出内訳表 退職金支出 教員 職員 役員 ←ここでした！ |
今日は、ここまでです。
2024年05月10日
評議員の退職慰労金の科目表示
こんにちは！今日は、ある大学法人でのご質問です。
＜Ｑ＞評議員の退職慰労金の科目表示
当法人の「役員及び評議員の報酬等に関する規程」に従い、評議員に退職慰労金を支払うことになりました。会計処理の科目は人件費ですか？経費ですか？
＜Ａ＞
まず基本の確認です。「基準」別表第一（資金収支計算書の記載科目）や別表第二（事業活動収支計算書の記載科目）では、役員報酬（支出）とは「理事及び監事に支払う報酬」と定義されています。ですから学校法人会計の世界では、評議員報酬は、明らかに役員報酬になりません。このことは、私学法でも役員は、理事及び監事に限定されていましたので（私学法35条� 法∋箜慄‥�にも評議員報酬を役員報酬に表示することは無理があります。このため学校法人会計では、評議員の報酬は、役員報酬に表示しないで消去法的に考えて経費科目で表示します。具体的には、（大科目）管理経費（小科目）報酬委託手数料、報酬 等の科目で学校法人部門に計上されることになります。今回の評議員の退職慰労金も同じように人件費ではなく、（大科目）管理経費（小科目）報酬委託手数料、報酬 等の科目で学校法人部門に計上されることになるでしょう。
今日は、ここまでです。
2024年05月08日
再リースの会計処理と基本金
こんにちは！今日は、ある高校でのご質問です。
＜Ｑ＞再リースの会計処理と基本金
部活動で使うマイクロバスのリース契約期間（リース料総額７００万円）の満了がきたのですが、学校では再リースしてバスを継続して利用することにしました。この場合の会計処理は、どうなりますか？
＜Ａ＞
１．再リース料の会計処理
再リース料の会計処理は、文科省のリース通知3(1)��で決まっています。
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�ズ謄蝓璽肯舛僚萢� 再リースを行う場合の再リース料は、経費として処理する。 |
※リース取引に関する会計処理について（通知）（平20.9.11 20高私参第2号)
リース期間が満了すると、リース資産は償却済となりなくなります。リース未払金もなくなります。
２．基本金の取扱い
さて、次は基本金の取り扱いです。リースの会計ルールでは、「リース契約（再リース契約を含む。）が終了し、リース資産を返還したときには、その会計年度でバスの基本金は取崩対象となります」（基本金に係る実務上の取扱いに関するQ&A(学校法人委員会研究報告第15号）3-4-2）。ですから逆に言うとリース資産を返還するまでは、基本金は取崩対象とならないことになります。ここは見解がわかれるかもしれませんが、制度的には基本金の取崩対象としないことが望ましいと書かれています。
これは、もし部活用のバイクロバスを現金で購入していた場合、減価償却が終了してもバスを継続して使うのであれば、基本金は取り崩しません。リース資産も同じように考えたわけです。ただリース取引の場合、基本金対象資産であるバスの簿価は、帳簿から消えていますので、基本金を繰り延べるような会計処理がわかりやすいでしょう。
今日は、ここまでです。
