2022年07月
2022年07月19日
【経費の教管区分】甲子園応援バスの会計処理
<Q>【経費の教管区分】甲子園応援バスの会計処理
高校野球で甲子園に行くことが決まりました。そこで在校生や卒業生、保護者が貸切バスで応援に行くことになりました。このうちバス代の足りない分は学校が補填します。このバス代の補填代経費の教管区分はどうなりますか?
<A>
まず、部活動の教育性を考えてみます。ただ、ここは学校会計の法規集では対応できないので専門書を引用します。
1.部活動の教育性
「学習指導要領には,運動部活動は「学校教育の一環」と明確に示され,技能の向上だけでなく,生きる力の育成,豊かな学校生活の実現させる役割を果たしており,生徒の多様な学びの場として教育的意義が非常に大きいものである。」とあります。(出典:教職をめざす人のための教育用語・法規[改訂新版](2021.5)より「 運動部活動での指導のガイドライン」の説明部分より抜粋)
そうすると野球部の甲子園出場も学校教育の一環と考えられます。
2.応援バス
会計処理は、事務局の主観が入ります。
甲子園に行く貸切バスも広く学校教育の一環(学校が責任を持つ行事の一環)と考えられそうです。
しかし、貸切バスの参加者は、在校生の他に卒業生、保護者もいます。このため学校の貸切バス補填代のうち、在校生や教職員の分は教育研究経費、OBや保護者の分は管理経費になってくるでしょう。
生徒・教職員分は、教育研究経費だとしても小科目です。貸切バス補填代の小科目は、決まっていませんが、経費の原則的な判断方法である形態分類で考えると「賃借料」になりそうです。ただ、学校での支出の目的しだいで福利費や生徒活動補助金も可能な感じがします。
OBや保護者分は、管理経費で、小科目は、形態分類の賃借料が考えられます。他にも学校の支出目的次第で福利費などが考えられます。
今日は、ここまでです。
2022年07月15日
昔の「決算書」??
こんにちは!今日は、昔の決算書についてのご質問です。
<Q>昔の「決算書」??
学校法人会計基準は、昭和46年(1971年)に施行されましたけれども、それ以前の学校法人の決算書には、どのようなものがありましたか?
<A>
学校法人会計基準(文部省令16号)は、昭和46年に施行されましたが、それ以前は全国統一の私立学校の会計ルールは、ありませんでした。ただ、私学法47条では、学校法人の決算報告書は、収支計算書、貸借対照表、財産目録と規定されていました。
具体的な決算書の例は、基準施行前の書籍「非営利法人の会計実務」p100(藤巻治吉、鈴木啓允)森山書店を参考にして昔の決算書を探ってみます。
この本では、「決算諸表」として
貸借対照表 |
損益計算書 |
財産目録 |
収支計算書(収支予算実績比較表) |
となっています。
今日は、ここまでです。
2022年07月13日
【基本金】昔もあったの「基本金」??
<Q>【基本金】昔もあったの「基本金」??
学校法人会計基準は、昭和46年(1971年)に施行されましたけれども、それ以前の学校法人の会計には、基本金はあったのですか?
<A>
学校法人会計基準(文部省令16号)は、昭和46年に施行されましたが、それ以前は全国統一の私立学校の会計ルールは、ありませんでした。
ただ、古い本をみると学校法人の会計本に基本金が登場してきます。たとえば、昭和35年(1960年)発刊の書籍「非営利法人の会計実務」(藤巻治吉、鈴木啓允)森山書店には基本金が出てきます。引用すると、
P12 1
.資産 資産とは、事業体の有する権利の総称である。しかしあくまでも簿記用語であるから、
貨幣価値で表示され得ないものは資産とはいわない。学校法人では、経営者の出資金を元入資本(正味財産、基本金)として、校舎、什器備品などの財貨や、生徒の未収の授業料などの債権(権利)を有することになり、これ等を総称して資産といっている。換言すれば、資金の調達(資本)によって運用する形態を、資産というのである。 |
P13 2.資本および負債 資本(正味財産、基本金)とは、企業の経営活動に投下された経済価値の総称であるといわれているが、非営利法人たる学校法人は、営利を目的としたものではない筈であるから、原則的には、資本という言葉を使用しない。したがって、学校法人では、正味財産、
または、元入金という言葉で表現することが無難かと思われる。 |
P65 貸借対照表の正味財産の部(貸方)は次のような表示方法が妥当である。 純財産の部 I 当初正味財産(基本金) I 剰余金(正味財産の増減分) 1 ○○積立金(未処分剰余金の処分) 2未処分剰余金 1)繰越剰余金(前期、剰余金処分の対象にならず今期に繰越された分) 2)当期剰余金 |
いずれも昭和35年(1960年)の基本金は現在2022年の基本金に通じるものです。また、基本金を「当初正味財産」と説明するのは上手で分かりやすい説明です。
今日は、ここまでです。
2022年07月11日
【経営指標】人件費依存率が大切な理由?
<Q>【経営指標】人件費依存率が大切な理由?
前理事長は、人件費依存率を大切な経営指標にしていたと聞きました。どうしてでしょうか?
<A>
人件費依存率は、名称は難しく感じますが内容は超簡単です。学生生徒等納付金収入を100円もらったときに人件費をいくら払っているか割合です。
きちんとした説明は、私学事業団の今日の私学財政を見てみましょう。
令和3年度版 今日の私学財政(大学・短期大学編)p94からの引用です。
2.人件費依存率 【計 算 式】 人件費 学生生徒等納付金 【比率の解説】 人件費の学生生徒等納付金に占める割合である。 この比率は人件費比率及び学生生徒等納付金比率の状況にも影響される。一般的に人件費は学生生徒等納付金で賄える範囲内に収まっている(比率が100%を超えない)ことが理想的であるが、学校の種類や系統・規模等により、必ずしもこの範囲に収まらない構造となっている場合もある点に留意が必要である。 |
ここからは、事務局の勝手な説明です。
人件費依存率が経営指標として優れている理由です。
通常、学校で一番大きな収入は、学生生徒等納付金です。他方、一番大きな支出は、人件費です。ですから一番大きな収入の学納金と一番大きな支出の人件費のバランス(人件費依存率)が取れていると学校法人の経営は、概ね順調と判断できるわけです。
ただ、人件費依存率は、学校種によって違うので、自分の学校の人件費依存率を他校と比べる場合は、学校種ごとに比較します。
1.
法人別の人件費依存率
大学法人(医歯系法人を除く) |
高校法人 |
幼稚園法人 |
専修学校法人 |
2020年度 (令和2年度) |
2020年度 (令和2年度) |
2017年度 (H29年度) |
2017年度 (H29年度) |
69.6% |
120.3% |
156.5% |
52.8% |
2.
学校種別人件費依存率
大学部門(医歯系法人を除く) |
高校部門 |
幼稚園部門 |
専修学校部門 |
2020年度 (令和2年度) |
2020年度 (令和2年度) |
2017年度 (H29年度) |
2017年度 (H29年度) |
59.7% |
120.6% |
162.3% |
50.4% |
高校法人や幼稚園法人では、学納金と並んで補助金の収入割合が多いので補正人件費依存率※「算式=人件費÷(学納金+経常費等補助金)」も併用します。
今日は、ここまでです。
2022年07月08日
【収支】学校法人の収支均衡について?
こんにちは!今日は、ある学校で外部理事の方から尋ねられました。
<Q>【収支】学校法人の収支均衡について?
学校法人の方は、収支均衡とよく言いますが、いったいそんなことどこに書いてあるのですか?収支均衡より学校法人は利益を増やした方が良いのではないですか?
<A>
収支均衡は、学校法人制度の根幹にあるものなので、今日は、会計法規集を使わないでお答えいたしますが、事務局の主観が大きく入っていることを予めお伝えいたします。
1.収支均衡の根拠
学校法人は、校地・校舎・教具・工具などの基本財産を準備してから学校を設置します。そして、4月から始まる教育活動の実施にあたっては予め確保した運用財産をもと1年間の教育活動を行っていきます。
※学校法人の資産の認可基準のイメージ
基本財産 |
校地・校舎・機器備品など |
運用財産 |
現金預金 |
私立学校法が制定された昭和24年当時の原点の通知をみてみます。私立学校法施行時の文部次官通知では、運用財産の額としては、本「学校の種類、規模に応じて毎年度の経常支出に対し授業料、入学金等の経常的収入その他の収入で収支の均衡が保てるものであること」とされています。そして、具体的な額が学校種別の寄附行為の認可に関する審査基準で定められています。
※私立学校法の施行について(昭25.3.14文官庶第66号各都道府県知事あて文部次官通達)
2.収支均衡より利益を増やした方が良い?
学校法人と利益を目的にする会社を少し比べてみます。
学校法人は私立学校を設置し、保護者から授業料、国・地方公共団体から補助金をもらい収入を確保し、そこから人件費や経費を支払い、教育活動を行っていきます。
他方、一般企業では利益を大きくし、配当金を支払うことが一つの目的になっています。学校法人でも実務的には、収支差額はある程度のプラスが望ましいと考えられますが(将来の安定した学校運営のために)、学校法人の制度の根幹は、保護者から授業料、国・地方公共団体から補助金をもらったら、そのすべてを教育事業に充て、学生・生徒に還元する。もし相当の収支差額が毎年、学校法人に残る場合は、授業料を減額して、保護者・学生の経済的負担を軽減すると言うのが学校法人制度の理念です。
このような学校法人制度の理念のもとで、私立学校は、建学の精神を発揮しながらも公共性の高い公教育を行っていきます。このため税務上も大きな優遇措置を受けています。もし学校法人が収支差額の拡大を目的にするならば設置者を株式会社に変え、税金を払いながらの私立学校の運営になるでしょう。
今日は、ここまでです。
2022年07月06日
幼保連携型認定こども園の所轄庁はどこ??
<Q>幼保連携型認定こども園の所轄庁はどこ??
幼保連携型認定こども園のみを設置する学校法人の場合、所轄庁はどこですか。
<A>
まず私学法の関連条文4条を見てみます。所轄庁には、学校の所轄庁と学校法人の所轄庁の2つがあるので注意します。
(所轄庁) 第4条 この法律中「所轄庁」とあるのは、第1号、第3号及び第5号に掲げるものにあっては文部科学大臣とし、第2号及び第4号に掲げるものにあっては都道府県知事(第2号に掲げるもののうち地方自治法第252条の19第1項の指定都市又は同法第252条の22第1項の中核市(以下この条において「指定都市等」という。)の区域内の幼保連携型認定こども園にあっては、当該指定都市等の長)とする。 1 私立大学及び私立高等専門学校 2 前号に掲げる私立学校以外の私立学校並びに私立専修学校及び私立各種学校 3 第1号に掲げる私立学校を設置する学校法人 4 第2号に掲げる私立学校を設置する学校法人及び第64条第4項の法人 五 第1号に掲げる私立学校と第2号に掲げる私立学校、私立専修学校又は私立各種学校とを併せて設置する学校法人 |
1.幼保連携型認定こども園の所轄庁(学校の所轄庁)
私学法の4条は、所轄庁は文部科学大臣又は都道府県知事のいずれかなのですが、カッコ書きで、幼保連携型認定こども園については、所轄庁が指定都市か中核市の長となると書いてあります。
2.幼保連携型認定こども園法人の所轄庁(学校法人の所轄庁)
ただし、指定都市や中核市の区域内で、幼保連携型認定こども園のみを設置する学校法人は、4条4号で、「指定都市又は中核市の長とする」と書いてないので、幼保連携型認定こども園法人の所轄庁は、都道府県知事となります。
ということは、指定都市や中核市の区域内で幼保連携型認定こども園のみを設置する学校法人の場合には、学校法人の所轄庁は都道府県知事で、設置学校である幼保連携型認定こども園の所轄庁はその指定都市又は中核市の長が所轄庁となってきます。
<発展>
指定都市と中核市の見ておきます。出典は、総務省のホームページです。
地方公共団体の区分 ( )は人口
|
指定都市 |
中核市 |
|
(人口50万以上の市のうちから政令で指定) |
(人口20万以上の市の申出に基づき政令で指定) |
全国 |
20市 |
62市 |
北海道 |
札幌(197) |
旭川(32)、函館(25) |
東北 |
仙台(109) |
いわき(33)、郡山(32)、秋田(30)、盛岡(28)、福島(28)、青森(27)、山形(24)、八戸(22) |
首都圏 |
横浜(377)、川崎(153)、さいたま(132)、千葉(97)、相模原(72) |
船橋(64)、川口(59)八王子(57)、宇都宮(51)、柏(42)、横須賀(38)、高崎(37)、川越(35)、前橋(33)、越谷(34)、水戸(27)、甲府(18) |
北陸 |
新潟(78) |
金沢(46)、富山(41)、福井(26) |
中部圏 |
名古屋(233)、浜松(79)、静岡(69) |
豊田(42)、岐阜(40)、一宮(38)、岡崎(38)、長野(37)、豊橋(37)、松本(24) |
近畿圏 |
大阪(275)、神戸(152)、京都(146)、堺(82) |
姫路(53)、東大阪(49)、西宮(48)、尼崎(45)、枚方(39)、豊中(40)、吹田(38)、和歌山(35)、奈良(35)、高槻(35)、大津(34)、明石(30)、八尾(26)、寝屋川(22) |
中国 |
広島(120)、岡山(72) |
倉敷(47)、福山(46)、下関(25)、呉(21)、松江(20)、鳥取(18) |
四国 |
|
松山(51)、高松(41)、高知(32) |
九州 |
福岡(161)、北九州(93)、熊本(73) |
鹿児島(59)、大分(47)、長崎(40)、宮崎(40)、久留米(30)、佐世保(24) |
沖縄 |
|
那覇(31) |
今日は、ここまでです。
2022年07月04日
【改正私学法の方向】理事の選任機関
<Q>【改正私学法の方向】理事の選任機関
私立学校法がかわるかもしれないとのことで騒がしかったのですが、結局、理事の選任はどうなるのですか?
<A>
5月20日に文科省より公表された「私立学校法改正法案骨子」が一番正確な情報です。
四 理事・理事会 理事・理事会については、次に掲げる措置その他必要な制度改正を実施する。 |
1 理事長の選定及び解職は、理事会において行うこととする。 |
2 業務に関する重要な決定は理事会で行い、理事に委任することを禁止することとする。 |
3 理事の選任を行う機関(以下「選任機関」という。)として評議員会その他の機関を寄附行為で定めることとする。評議員会以外の機関が理事の選任を行う場合、あらかじめ選任機関において評議員会の意見を聴くこととする。 |
4 理事の解任について、客観的な解任事由(法令違反、職務上の義務違反、心身の故障その他寄附行為で定める事由をいう。以下同じ。)を定め、評議員会は、評議員会以外の選任機関が機能しない場合に解任事由のある理事の解任を当該選任機関に求めたり、監事が機能しない場合に理事の行為の差止請求・責任追及を監事に求めたりすることができることとする。評議員は、これらが機能しない場合に自ら訴訟を提起できることとする。 |
5 校長理事については、解任事由がある場合に理事としての解任がなされるように措置する。 |
6 大臣所轄学校法人においては、外部理事の数を引き上げることとする。また、個人立幼稚園などが学校法人化する場合の理事数等の取扱いを定める。 |
7 理事の任期は、選任後4年を上限に寄附行為で定める期間内の最終会計年度に関する定時評議員会の終結の時までとし、再任を認めるとともに、理事の任期が監事及び評議員の任期を超えてはならないこととする。 |
8 理事は、理事会に職務報告をすることとし、知事所轄学校法人については、実情を踏まえた柔軟な取扱いを認めることとする。 |
9 理事は、理事の立場で評議員会に出席し、必要な説明をすることとする。 |
※出典 私立学校法改正法案骨子 (PDF:133KB) PDF
今日は、ここまでです。