2011年12月

2011年12月26日

【特有】交際費の5000円基準

飲み会こんにちは! 今年の最終Q&Aです。先日、高校さんで聞かれました。

 

<Q>金額は少額なのですが、近隣とのお付き合いの支出があります。民間企業では、5000円基準で交際費と会議費を分けたのですが、学校会計ではどうなっているのですか?

 

<A>

 民間企業で使う交際費・会議費は、学校会計では「渉外費」などを使います。小科目なので学校法人会計基準で決まった記載科目はありませんが、事業団の規程集や東京都の通知では、交際費などの経費支出は「渉外費」とする例示があります。

※渉外費

科目

内容

出典

渉外費

交際費等の経費支出をいう。

昭和54年・日本私学振興財団編・学校法人諸規程例集

渉外費

交際費等

東京都の通知。東京都処理標準

 

 さて、民間企業では一人当たり5000円超の支出は交際費、5000円以下の支出は会議費としました。この場合の根拠は法人税法です。

 ところが、学校法人会計基準では、法人税法とは別のルールで計算書類を作りますので、民間企業が使う交際費の5000円基準はありません。

 

 ただ、学校法人が、不動産賃貸、物品の販売などの法人税法上の収益事業を行っており、法人税の申告義務のある学校法人の場合は、税務申告のために税法の5000円基準で損金不算入となる交際費を抽出しなければなりません。ただし、この場合でも学校法人が作成する計算書類は、「交際費」「会議費」の勘定科目を使えとは決まっていません。経費の小科目の追加や細分化は学校法人の任意です(基準別表第1・第2の注)。つまり、計算書類の作成では「渉外費」を使って、法人税の税務申告だけ、ここから1人当たり5000円超の渉外費をピックアップすればよいわけです。



kaikei123 at 10:50|PermalinkComments(0)TrackBack(0) □□ 支出/経費 

2011年12月19日

【経費】教育研究経費と管理経費の区分

教管区分こんにちは! 今日は、ある高校の経理主任さんからのご質問です。

 

 

 

 

<Q>学校法人の経理では、教育研究経費と管理経費の区分がよくわかりません。どう考えたらよいですか?

 

<A>

教育研究経費支出と管理経費支出の区分(略して「教管区分」)については、大枠しか決めがないため実務的には判断に困ることがあります。

学校法人会計基準では、教育研究経費支出は補助金の対象経費になるので管理経費支出との区分を求めています。基準では、教育研究経費支出は、「教育研究のために支出する経費(学生、生徒等を募集するために支出する経費を除く。)をいう。」(基準別表第1)とだけあります。

しかし、このルールだけでは実務処理が難しいことから、教育研究経費と管理経費の区分について、昭和46年の文部省通知(雑管第118号)では、次の7項目を管理経費とし、それ以外の経費については主たる使途に従って法人が自主的な判断でいずれかに区分することにしました。

 

 管理経費となる例(雑管第118号)

1.役員の行なう業務執行のために要する経費および評議員会のために要する経費(役員の旅費、事業費、交際費等)

2.総務・人事・財務・経理その他これに準ずる法人業務に要する経費(法人本部の業務に限定されない)

3.教職員の福利厚生のための経費

4.教育研究活動以外に使用する施設、設備の修繕、維持、保全に要する経費 (減価償却費を含む。)

5.学生生徒等の募集のために要する経費 (入試経費を除く)

6.補助活動事業のうち食堂、売店のために要する経費 

7.附属病院業務のうち教育研究業務以外の業務に要する経費

 

このうち7番は附属病院に関する支出なので普通の学校法人は、1から6番が管理経費になります。附属病院のある学校は1から7番が管理経費になります。

ちょっと考え方を整理するために図解してみましょう。

 

教管区分

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお、主たる使途によっても区分しがたい経費、たとえば水道光熱費支出や通信運搬費支出であれば、教育研究施設と管理施設の面積比、使用時間、生徒数や教員・職員の人数比で按分計算してもよいことになっています。

 

それでも、実務処理では、最終的には、主たる使途で法人が自主的に教育研究経費と管理経費の区分を判断すると言うのですが、どうしても不明瞭感が残る支出がある場合があります。この場合は、標準的な区分例を事業団の「経営に関する実務問答集」で探したり、前回の同じような支出例を探して参考にしたり、支出した部署を考慮して考えたり、按分計算したり、今度困らないように経理細則で割り切って決めるなどして教管区分を決めていきます。



kaikei123 at 07:28|PermalinkComments(0)TrackBack(0) □□ 支出/経費 

2011年12月12日

【支出】人件費と経費の違い

校医こんにちは! 今日は、S県の私立高校でのやりとりです。

 

<Q>校医が行う健康診断、歯科検診について、検診代を払うのですが、人件費なのか経費なのかよくわかりません。人件費と経費の違いを教えて下さい。

 

<A>

各学校を訪問していて、人的サービスの支払いを人件費にするか経費(委託料、支払報酬、報酬委託手数料など)にするか、区別について聞かれることがあります。

整理すると学校が労働サービス代を払う場合には、本人との関係を法律的にみると、「雇用契約」「委託契約」「請負契約」の場合がみられます。

雇用契約は、学校の指揮・命令に従って仕事をするところに特徴があり、学校会計では「人件費支出」になる部分です。

一方、請負や委任は、学校の指揮・命令を受けることなく自らの判断で仕事をしますが、労務提供者に大幅な裁量権がありません。

さらに、請負と委任の違いは、仕事の完成が条件になっているかが違います。請負は仕事が完成して初めて報酬を受け取ることができますが、委任は仕事の完成をしなくても報酬を受け取ることができます。  

 学校会計では、学校と雇用契約のある場合を人件費支出、委託契約や請負契約の場合は経費支出にします。

 

 

雇用契約

委託契約

請負契約

指揮・命令

学校主体

本人主体

本人主体

仕事の完成

必須でない

必須でない

必須

学校会計

人件費支出

経費支出

経費支出

 

 契約形態自体で、学校会計の勘定科目が変わるわけですが代表例をいいますのでご参考にして下さい。

■雇用契約…教員、職員、役員報酬(これは委任契約だけど人件費支出にする決まり)、アルバイト、臨時職員

■委託契約…清掃委託契約、人材派遣会社からアルバイト、公認会計士との監査契約、弁護士との顧問契約

■請負契約…原稿料・翻訳料・設計料など仕事の完成(成果物)に対して対価を支払う仕事。

 

校医が行う健康診断や歯科検診代は契約しだいです。委託契約にする場合は経費、雇用契約の場合は人件費支出になります。



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2011年12月05日

【人件費】本務教員と兼務教員の区分の実務

授業3こんにちは!今日は、高等学校(一条校)と専門学校を設置している法人の事務長からのご質問です。

 

<Q>教員人件費を本務と兼務をわける基準を教えて下さい。

 

<A>

 経費の「教育研究経費と管理経費の区分」ではありませんが、ときに悩ましいと思う区分に本務と兼務の違いがあります。

 

従来のからの会計士協会からみたルールでは、「本務兼務の区分は、学校法人の正規の教職員として任用されているか否かによる。」(日本公認会計士協会学校法人会計問答集(Q&A)第3号。S59)となっています。つまり、本務・兼務の別は通常発令の形態によって区分することになります。いわゆる「発令基準」です。このルールは大枠を決めるものなのでもう少し解説がほしいように思います。

 

そこで文科省系の書籍をみてみます。文科省では、「職員の別及び本務・兼務の別は,この計算書類作成の目的から,所轄庁より受ける経常費補助金の交付要綱などに準拠すべきである。」(「新版学校法人会計基準詳説」H2。野崎弘先生←文部省高等教育局私学部長)と言うわけです。手がかりは増えましたが、ここでは、経常費補助金をうけない専門学校の取扱いまで、まだわかりません。

 

 実際の実務を見てみると、本務と兼務の区分は、法人と教員の身分関係が正規であるかどうかの判断を、発令状況できめています。この発令状況は、常勤・非常勤の別、給与体系、授業時間などをみて決めています。

 

 ただ、知事所轄学校法人について、一条校について各県別に実際例を調べてみると、「学校基本調査の区分に準じて対応している」県、「本務教員は週5日以上、常勤勤務(原則18時間以上)している者」とする県、「学校法人に正規の教職員として雇用され、発令されていることを本務」とする県など、多少のなどバラツキが見られます。

 

 それと、注意点で、高等学校以下の一条校の場合、該当する学校種の教員免許を持っていないのであればそもそも職員人件費になります。大学・短大・専門学校等の場合には、教員免許の問題はないので、雇用契約があれば、教員人件費で処理です。

 

 以上、本務・兼務の区分の仕方は、発令基準を基本にしながらも、知事所轄学校法人では多少のバラツキがみられるので一度、各所轄庁に確認しておいた方が無難と考えます。

 



kaikei123 at 07:25|PermalinkComments(0)TrackBack(0) □□ 支出/人件費