2020年01月28日
【幼児教育】保育と教育の違いがピンとこない理由
<Q>【幼児教育】保育と教育の違いがピンとこない理由
幼児教育の世界では、保育と教育の意味の違いがピンとこないのですがどうしてでしょうか?
<A>
今日は、ご回答ではなくコメントといたします。
歴史的に見て「教育」と「保育」は、制度上、別のものと扱った時代がありましたが、現在は「保育」と「教育」を共通化する方向にあり、「保育」と「教育」の違いがややこしくなっています。
<少し説明>
1.「保育」の誕生
「保育」という語は、幼稚園における教育を示すものとして、東京女子師範学校附属幼稚園の設立に伴い、「幼稚園規則」(1876(明治9)年)において用いられました。(江戸時代には、「教育」という語が広く使用される一方、careに近い言葉として「撫育」や「養育」が使用されていました、幼稚園の成立にあたってつくられた新しい言葉が「保育」でした。意外ですね。その後「保育」は、幼稚園の営みを表現する言葉として普及していきます。)
その後、幼稚園か保育所かにかかわらず、小学校以降の教育とは異なる、幼児期の特性を踏まえた「世話と教育」を表すものとして「保育」が使われるようになりました。
1947(昭和22)年に公布された学校教育法第77条(当時)では、幼稚園の目的が、「幼児を保育し、適当な環境を与えて、その心身の発達を助長すること」と規定され、今日に至るまで、実践的には幼稚園でも保育という語が使われています。
2.「保育」と「教育」の区別へ
しかし、1956(昭和31)年に「幼稚園教育要領」、1965(昭和40)年には「保育所保育指針」が出され、幼稚園に関しては教育、保育所に関しては保育という語が意識的に使用されるようになりました。そして、学校としての幼稚園、児童福祉施設としての保育所という目的や機能の違いが明確にされていきました。
なお、「保育所保育指針」では、保育所の保育を、養護と教育が一体的に展開されるものとしています。
3.「保育」と「教育」の並列化・共通化
さらに、幼保連携型認定こども園は、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第9条では、子どもに対する学校としての教育および児童福祉施設としての保育を行う施設と規定され、教育と保育が並立されました。
その一方で、2017(平成29)年の「幼稚園教育要領」「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」「保育所保育指針」の改訂・改定では、幼稚園、幼保連携型認定こども園、保育所が幼児教育を行う施設として明示され、教育に関する部分の一層の共通化が図られています。
このように、制度上、教育と保育は、その差異化と共通化の両方が行われてきたことにより、それぞれの用語の意味や位置づけが非常に複雑になっているのが現状である。
ただし、広義には、乳幼児期の特性を踏まえて、子どもの育ちを支え促す営みに対して、保育という語が形態や施設種別にかかわらず用いられている。
(参考:「保育学用語辞典(2019.12中央法規出版。秋田喜代美監修、東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター著)」P4、P250の「保育」の説明。)
※勝手に図解してみます。
「教育」と「保育」の変遷
経緯 | 「教育」の用語 | 「保育」の用語 |
江戸時代 | 「教育」あり | (なし) |
1876年 (明治9) |
| 東京女子師範学校附属幼稚園で「保育」誕生 |
1947年 (昭和22) |
| 学校教育法第77条で幼稚園は、「保育」 |
1956年 (昭和31) | 幼稚園教育要領で幼稚園は、「教育」(幼稚園が「保育」から「教育」に変わる) |
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1965年 (昭和40) |
| 保育所保育指針では「保育」
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2017年 (平成29) | 「幼稚園教育要領」「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」「保育所保育指針」の改訂で、幼稚園、幼保連携型認定こども園、保育所が幼児教育を行う施設として明示され、教育に関する部分の一層の共通化 |
今日は、ここまでです。