【助成法】ミニ逐条解説スタート【私学助成法】制定当時の記録(文部省)から1

2012年08月10日

【私学助成法】制定当時の記録(文部省)から2

案内こんにちは!私学助成法を逐条ごとにみていくわけですが、その前に助成法が制定された当時の記録(文部省)を遡りみておきます。

分量の関係で2回に分けて掲載いています。後半です。

 

 

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出典:ジュリスト1976.1.1「特集・教育の再編成」

 「私立学校振興助成法」高橋邦男(文部省管理局振興課長)より

 

(後半。図表は省略)

◆私学助成法の概要

この法律の内容は次のとおりである。

(1)目的を明確に定めたこと

この法律は、国と地方公共団体が行う私立学校の助成について定めるものであり、その目的として、〇篶学校の教育条件の維持向上、学生・生徒の経済的負担の軽減、私学の経営の健全性を高めることの3つを掲げ、これらを通じて私立学校の健全な発達に資することをねらいとしている。

 

これは、従来の私学助成の根拠規定とされていた私立学校法第59条においては、単に「教育の振興上必要があると認める場合に……私立学校教育の助成のため….:補助金を支出できる」旨の規定が置かれていたことと比較すれば、私学助成についての国の基本的姿勢を宣明するとともに、私立学校も国の財政援助についての法的保障のもとに経営の安定の努力が払えるようにしたもので、その意味するところは非常に大きいといえよう。

 

(2)大学・高等専門学校への補助

私立の大学、高等専門学校の教育研究に係る経常的経費について、国はその2分の1以内を補助することができることを明文でうたい、その経常的経費の範囲、算定方法等については政令で定めることとしたこと。

 

これは、私立大学等に対する国の補助として、まず私立学校の全経費の70%以上を占めるといわれる経常的経費をとりあげ、私立学校の特殊性を考慮して、2分の1という補助の目標を念頭に置きながらも、現在の財政状況等を考慮して2分の1以内と定めたものであり、具体的な経常費の範囲等については毎年度の予算をふまえて政令で規定することとしたものである。

 

なお、これに関連して、補助金の減額または不交付に関する規定を置き法令違反、著しい定員超過その他一定の場合には、補助金を減額して交付し、または全く交付しないこととする措置をとることとしている。これは、健全な私学の経営・教育研究の向上を図る観点から、日本私学振興財団法等の施行の経験に基づき、国民の税金であるところの補助金の適正な執行を図るとともに、減額等の理由を法律上明確にしたものである。

 

また、私立大学における学術の振興や、大学・高等専門学校の特定の分野、課程等に係る教育の振興のため特に必要があるときは、補助金を増額して交付することができることとし、政策目的による補助金の増額を法律上規定して、補助金のより効果的な配分が行えることとした。

 

(3)都道府県が行う高校以下の学校への補助に対する国の補助

都道府県が、その区域内にある私立の小学校、中学校、盲学校、聾学校、養護学校または幼稚園の教育に係る経常的経費について補助する場合には、国は、都道府県に対し、政令で定めるところにより、その一部を補助することができることとし、国の補助を明文でうたったこと。

 

高校以下の私学助成については、前述したように従来から地方自治の原則により、国は地方交付税制度を通じて私立大学等の経常費助成に準じた助成ができるよう財源措置を講じてきたところである。しかしながら、その現状は、都道府県聞の助成にアンバランスが生じており、また、最近の地方財政の悪化に伴い、各都道府県は国庫補助の拡充を強く期待している。

 

なお、国の場合と異なり、都道府県の補助の割合を明示していないのは、財政に関する地方自治の原則を尊重するとともに、現に国が私立大学等に対して行うと同様の補助が、法律の規定がなくとも行われているからである。従来の私立学校法では、このような都道府県に対する国の補助についての規定はなかったものであり、私学関係者からは今後の高校以下への私学助成の一層の拡充が期待されている。

 

(4)その他の助成

学校法人が行う学資の貸与事業について、固または地方公共団体は、資金の貸付けその他必要な援助をすることができる旨の規定を置いたこと。

 

また、以上のほか、国または地方公共団体は、学校法人に対し、補助金を支出しまたは通常の条件よりも有利な条件で貸付金をし、その他の財産を譲渡したり貸し付けたりすることができることとした。この点は、従来の私立学校法59条の規定の趣旨を受け継いだものである。

 

(5)所轄庁の権限の整備

この法律では、助成に関する規定の充実に関連して、従来の私立学校法第59条の監督規定を整理して移し替える等の整備を行っており、所轄庁は、助成を受ける学技法人に対して、次のような権限を有することとした。

ア 助成に関し必要があると認める場合に業務、会計の報告を求め、関係者に質問し、帳簿等を検査すること。

イ 著しい定員超過に対し、是正を命ずること。

ウ 予算が助成の目的から不適当である場合に変更を勧告すること。

エ 役員が法令・寄附行為等に違反した場合に解職を勧告すること。

 

なお、これらのうち、イ、ウ、エの措置を行う場合には学校法人の理事等に弁明の機会を与えなければならず、また、私立学校審議会、私立大学審議会等の意見を聴かなければならないこととしており、その公正妥当な運用のための手続を保証している。これらの規定は、従来の私立学校法第59条にあった、監督規定のうち、凍結されていた第10項の設備・授業の変更命令の規定を削除したほか、若干の整理を行うとともに新たに社会的にも問題となっている大幅な水増し入学に対し、その改善を図るため、定員超過の是正命令の規定を追加したものである。

 

(6)会計書類の作成等

会計書類等についても、私立学校法第59条の規定を移し替えて整備し、経常的経費の補助を受ける学校法人は、学校法人会計基準に従って会計処理を行い、財務計算に関する書類を作成しなければならないこととしたこと。この場合、補助金の額が寡少であって、所轄庁の許可を受けたときを除き、一定の事項について公認会計士等の監査報告書を添付しなければならないこととした。

 

これは、従来、当分の問、知事所轄法人については、監査報告書を添付させるかどうかは知事の判断にまかせることとされていたものであるが、今回この法律によって助成の拡充を図っていくことに伴い、原則として公認会計士の監査を行わせることとして、補助金の適正な執行を図ることとしたものである。 

 

学校法人以外の私立の学校の設置に対する規定を置き、この法律において「学校法人」には、当分の問、学校教育法第102条の規定により私立の盲・聾・養護学校及び幼稚園を設置する個人、民法法人、宗教法人等を含むものとし、必要な読替えを置いて、同じ第75回国会で成立した私立学校法等の一部を改正する法律の趣旨をそのまま受け継いだこと。

 

(7)関係法律の一部改正

私立学校法を一部改正し、新たに高等学校の学科、大学の学部の学科の設置廃止と収容定員に係る学則の変更については認可事項としたこと。

 

また、文部大臣は、昭和56331日までの聞は、大学設置審議会及び私立大学審議会の意見を聴いて特に必要があると認められる場合を除き、私立大学の設置、私立大学の学部または学科の設置、及び私立大学の収容定員の増加に係る学則の変更についての認可はしないものとしたこと。

 

これは、国の財政援助の法的保障の創設に伴い、当面は、私立大学は個性ある教育という私学の理想を高く掲げて、量的拡大よりも質的向上を図ることが適切であるということと、私立大学の一方の意思によって財政負担が無制限に膨張することを避けようとするものである。

 

この理由は、私立大学の一部にはこれまで高度経済成長下においてマンモス化する傾向があり、個性のある、特色のある教育を理想とする私立学校の精神からいえば、必ずしも望ましい姿とは一言えない面があり、またこのような恒久的な財政援助の保障制度を設ける以上、教育上の理由からも5年間ぐらいは原則として量的な拡充は抑制し、教育水準の向上を図るという意味で質的向上を図るべきであるとされたからである。なお、5年としたのは、高等教育機関の全国的な配置計画の作成等との関連もあり、経過的な規定として5年間に限定したものである。

 

また、「特に必要がある」場合というのは、例えば大学等の設置をすでに何年も前から準備していた場合であるとか、高等教育機関の整備されていない地域において、その地域の高等教育水準の向上を図るために必要がある場合や、日本の職業構造、産業構造の変化に従って、新しい学問分野の開拓が必要である場合などが国会質疑の場において明らかにされているが、今後ケースバイケースで対処していかなければならない問題である。

 

この点については、技術者の養成その他新しい文化形成に必要な部門及び全国の適正配置を十分考慮して、一律規制にならないようにすることと、既設の実員の実情に合わせた定員化を図ること等について参議院の文教委員会において付帯決議が行われている。

 

(8)この法律は、昭和5141日から施行することとしたこと。

以上がこの法律の概要である。

 

この法律は、従来、私立学校法の第3章学校法人の第5節助成及び監督の中の第59条1項のみで規定されていたものが、一つの新しい法律として整備されたものであり、これにより、私立学校法、日本私学振興財団法、私立学校教職員共済組合法と相まって私立学校に関する四つの法典が整備されることとなった。

 

これまでの予算補助という形から一歩進んで国民のコンセンサスともいうべき私学助成について国の基本的姿勢と財政援助の基本的方向が宣関されたわけである。

 

これにより、今後私立学校も国の財政援助についての法的保障の下に経営の安定のための努力を払えることとなったものであり、さらに私立学校に子弟を在学させている多くの国民父母にとってはその経済的負担の軽減が期待できると共に、私立学校の教育研究水準の向上が期待されるものである。

 

この法律は、今後経常的経費の範囲その他について具体的な内容を予算により盛りつけし、関係政令等を整備したうえで昭和514月から施行されることとなるわけであるが、私共私学行政にたずさわる者としては、この法律の趣旨にそって今後とも私学の振興に一層努力すると共に、この法律がひいては日本の教育全体の振興に役立つよう運用していきたいと考えるものである。

              (たかはし・くにお)

 

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今日は、ここまでです。



kaikei123 at 07:27│Comments(0)TrackBack(0) 【法】 私学助成法・ミニ逐条解説 

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